ANOTHER STORY

三人の始祖

プリミティブレネゲイド

遙か古えの時代。 約五億年前の時代。

微惑星同士の衝突と合体の繰り返しにより、地球という惑星が形成されて既に四十億年余の時間が過ぎていた。

地球にはすでに原始生命が誕生していた。 全ての生命は単細胞であり、ごく単純な生命反応を行なう原核細胞が地球のほぼ全てを占める海に存在していた。

この原初の星に、外宇宙より飛来した微惑星が衝突する。

この衝突により生じた熱が原始生命たちにエネルギーを与え、進化を促したことは違いない。 だがこの微惑星はもう一つ、一つの因子を外宇宙から原始生命たちにもたらした。

この因子は、はるか深淵の宇宙より飛来した生命である。 この生命は原初の生命力あふれる地球に辿り着くと、この星の環境に適応するために自己改質を開始した。 そして自分たちが存在しやすい環境にするために全ての物質に干渉した。 特に原始生命はこれにより大きな進化を果たすことになる。

これがカンブリア紀における生命の爆発的進化であり、レネゲイドウィルスによる地球侵触の始まりである。 言ってしまえば現代においてレネゲイドが世界中を改革するよりも遙か古代からレネゲイドは地球そもののを侵蝕していたと言えるだろう。

このレネゲイドウィルスを「プリミティブレネゲイド」と呼ぶ。


プリミティブオーヴァード

時は過ぎゆき、現在より約五百万年前の時代に進む。

地球の支配者として長らく君臨していた猛き竜、恐竜たちが地球の劇的な環境変化により絶滅し、ヒトが地球の新たな君臨者としてその生息範囲を広げつつあった。

ヒトが何故新たな支配者として地上に君臨することができたか。 高い適応能力、知性、創造能力、様々なものが挙げられる。 しかし、そもそも何故類人猿に属する猿の中からヒトという種が誕生したのか。 それは太古に原始生命に寄生し、全ての進化の起因となったプリミティブレネゲイドによる力であるところが大きい。 端的に言うならば、この時においてレネゲイドに選ばれた種は生き残り、選ばれる事の無かった種が絶滅したということになる。

だが生物の中に、よりレネゲイドに適応し、レネゲイドが本来持つ超常的な能力を行使する個体が現れはじめた。 地球史上最初のオーヴァードたちである。

彼ら、「プリミティブオーヴァード」はその超常的かつオーバースペックと言える能力を行使し、一時期においては他の生物を圧倒し、外敵となる生物を排斥した。 だが突然変異と言える存在であり、生物として非常に不安定なものであったが為に、一部の例外を除いて彼らは極々短い間に滅びることになる。


オリジナルレネゲイド

更に時は過ぎ去り、現在より約百七十万年前の時代に進む。 現人類が誕生した更新世である。

この時代において、レネゲイドに一つの大きな異変が起こる。 「最適化」である。 現代に至る生物の基本的な構造が確立された事に反応し、レネゲイドが環境に対応した自己変革を行なったのである。

これを「レネゲイド第一次変革」と呼ぶ。 この第一次変革により生まれたレネゲイド、そしてこれと同じ性質を保持するレネゲイドを、地球独自のレネゲイドという意味で「オリジナルレネゲイド」と呼ぶ。

この変革は地球上、全生物の中で行なわれた。 プリミティブレネゲイドと違って生物により適した性質にシフトしたレネゲイドであるがために、多数のオーヴァードが生まれることになった。 多数とは言えど、それはプリミティブオーバード誕生時に比べて、であり、その数は全体数に比較するとやはり極々少数であったと言える。 だがこの中で人類のオーヴァードは、長い時の中で種が獲得した社会性その能力を用い、他より優れた個体として同種の集団を率いる存在となってゆく。 この点において彼らの力はある意味においてプリミティブオーヴァードたちの比では無いと言えるだろう。

余談ではあるが、プリミティブレネゲイド、そしてオリジナルレネゲイドには侵蝕率が上昇した時に発現する一つの大きな共通点がある。 それは現在一般的に確認されるレネゲイドと違い、保持者の肉体能力や精神状態を向上させる性質を何ら持ち得ず、その代わりに保有する異能力を大幅に増大させる点である。 これは、基本的な生体能力において当時の生物が優れていたことが関係している。 環境が安定した地球上の中で、生命力の強化よりも、同種(他オーヴァード)に対する優位性をレネゲイドは優先させたのだ。


イモータルオーヴァード

オリジナルレネゲイド保持体、つまり「起源種」は世界各地で生まれた。 だが、やがて、この中にレネゲイドと生物のバランス、その区引きを違えてしまった個体が生まれる。

「イモータルオーヴァード」。 起源種の性質を持ちながら、現在「古代種(エンシェントレネゲイド)」と呼ばれるレネゲイド、その祖のひとつとなった者たちである。

イモータルオーヴァードの特徴、それは生命活動の大半をレネゲイドに委ねている、という点が先ず挙げられる。 レネゲイドがゲノム単位で完全に宿主の細胞構成を変異させた存在、それがイモータルオーヴァードである。 これにより彼らは本来の生物が持つ能力から逸脱した生命力を誇り、周囲のレネゲイドを取り込み変質させ、肉体を再構成することによる、永遠に近い生命活動をも得た。 この性質を持つレネゲイドを保持する個体こそが現在「古代種」と呼ばれるものたちである。

このイモータルオーヴァードは一般に呼ばれる古代種と異なり、オリジナルレネゲイドつまり起源種としての性質も保持しているがために、生命力においても異能力の強度においても他の追随を許さない力を有していた。

人類に誕生したイモータルオーヴァードは僅かに三体。 彼らは気が遠くなるほどの永い年月を生き、地上を渡り歩き、そしてレネゲイドの共振に導かれ、ある地で邂逅を果たした。

この邂逅こそがやがて、後の世に続く闘争の幕開けとなる。